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【経営者対談】「人を大事にする会社かどうか」も会社選びの基準の一つ

【経営者対談】「人を大事にする会社かどうか」も会社選びの基準の一つ

やりたいことが見つからない人へ。「人を大事にする」会社を選ぶのはどうだろう?働き心地がいい会社は、業績も、あなたも自身も伸びるからです!独自の技術力をもつカトーテックと京都サンダー。ともに家族が創業者で社員の働き心地を最優先、気づけば業界のフロンティア(開拓者)と、共通点の多いお2人に「会社選びのヒント」を聞いた。

インタビュイー

新井恭子

新井恭子 京都サンダー株式会社 代表取締役・一般社団法人建設ディレクター協会 理事長

京都出身。京都サンダー株式会社入社後、現職。休みの日も「仕事のことはずっと頭の中にあります」。建設ディレクター協会理事長として全国を飛び回ることも多い。

坂井敦子

坂井敦子 カトーテック株式会社 代表取締役

京都出身。専門学校卒業後、カトーテック株式会社にて6年間動務、出産を機に退職。その後、調理関係の会社を経て、11年前カトーテックに再入社し、現職。「休日のうち1日は完全にオフ。すっぴん・普段着でひたすらダラーっとしています。外出も犬を散歩させるぐらいですね」。

※肩書・プロフィールは取材当時のもの


まさか私が経営者に!?

――社長になられた経緯は?
 
坂井:カトーテックは1949年に祖父が創業し、「人が物に触れた時の感覚を数値化する」風合い計測装置のメーカーとして、父の代で発展。私が代表取締役社長に就任したのは6年前で、そもそも家業を継ぐことはまったくの想定外でした。カトーテックで働いてはいましたが、経営とは無関係。ところが後継者不在で、私が継ぐことになったのです。父の背中を見て育ったので、潰したくない。「父の育てた会社を守る」と決意したのです。
 
新井:私も家業を継ぐ気はさらさらなく、短大の家政科を出て、他の会社に就職。「将来はお嫁さん」とのんびり夢見ていた25歳のときに入社。10年前に社長に就任しました。当時、京都サンダーは土木工事の積算・見積りソフトの制作販売会社で、私にはまったく未知の分野からのスタートでした。
 
――就任後は順調でしたか?
 
坂井:おそろしいほどの失敗をしました。最初は経営をコンサルタントに任せていたのですが、理論と実践の違いに気づかなかった。「自分はこんなに必死なのに、社員はなんでわかってくれないの!?」と独りよがりな社長になっていた。その結果、大きな仕事に失敗し、大赤字を出し、人も離れました。最悪でした。復活できたのは「この失敗を、二度と繰り返さないでがんばろう」との強い思いがあったから。
 
新井:共感します! 私もそれこそたくさんの失敗をしてきました。そもそも私の入社時は経営がどん底、お客様は男性ばかり。「女になにができる?」とあしらわれ、落ち込む日々でした。
 
――どう乗り越えたのですか?
 
新井:まずは知識を身につける勉強を。そうするとお客様が「よく勉強してるね」とほめてくださる。うれしくて、その声に応えようと「こんな機能が欲しかった」といわれるようなソフト開発やアフターケアに取り組みました。相手のことを思い、誠実にやれば返ってくる。それを実感しました。何ごとも、相手が何を求めているのか、それに対してどのように真摯に応えるかという姿勢を大切にしています。
 
坂井:同感です。仕事も会社も結局はどれだけ相手を大事にするかなんですね。私は失敗を経て、「社員が支えてくれるから会社があり、成長する」と気づくことができました。そして「守る」とは単なる維持ではなく、時代に合せて変化・発展させることだとも思いました。たとえば機械もその時代に合った形や機能に変えないと、価値そのものが伝わらないのです。
 
新井:私も最初は守ることが継続と思っていました。でも、時代とともに自分も仕事も進化させるから発展できるのですね。

経営者は「発信」がおもしろい

――進化に必要なものは何ですか?
 
新井:勉強ももちろんですが、それよりも大きいのが人との出会いです。当社は建設業専門のソフト販売を経て導入・活用に関わるコンサルへ、さらに技術者に向けたセミナーを開催。そして、「建設ディレクター」という新しい職域を創出し、建設業界のデジタル化を担う人材教育を行っています。建設ディレクターは女性や若い方が活躍されています。私に関わってくださった方々とのアドバイスがあって生まれたと思っています。
 
坂井:人とのつながりはかけがえないものですね。当社も京都大学の教授の「布の風合いを数値化したい」との提案から技術開発に協力。その後、さまざまな分野の企業や研究者と出会い、多くの計測システムを開発しています。現在、海外のお客様は50ヵ国以上、売上の半数は海外が占めています。
 
――経営者のおもしろさとは?

坂井:私の「こうしたい」という抽象的な思いを実現できることです。もちろんそれは、具体化するために論理を持って戦略を練り、実行してくれる社員あってこそ。また会社運営には物事を多方面から見る必要があり、自分のことも客観的に見られるようになりました。「性格はおおざっぱだけれど、仕事では案外緻密な部分もある」など、自己発見できるのも予想外でした。
 
新井:まさにそうですね。自分が思い描いた企画を世の中に発信し、喜んでもらえるのは本当にうれしいです。私の夢は規模を大きくすることではなくて、社員がいきいきと働いて、その結果お客さんに喜んでいただけること。むしろ私は、「会社を大きくする」よりも、「目の前の人の幸せ」を考えたいと思っています。

大事なのは「社員の幸せ」

坂井:私にとってまず大事なのは、目の前の社員の幸せです。新入社員には「社会でしか学べないことを身につけて、ステキな子に育ってほしい」と。ほとんど母親目線です(笑)。
 
新井:うちの規模なら社員との距離も近く、一人ひとりを見ることができます。当社には、もの静かなんですが、驚くようなデジタル能力、分析力を発揮している社員がいます。目立たなくても各人に長所、個性がある。そこを見落とさないようにしたいのです。
 
坂井:おっしゃる通りです。私も若い社員とおしゃべりし、今の流行を教えてもらっています。全員が明るく元気な性格である必要はない。その人らしい働き方で、一生懸命、目的に向かってワクワクしながら働ければ、自然に会社が明るく元気になる。それが、当社や製品の「心地よさ」や成長につながっていくのだと思います。
 
――今仕事を探している人に向けて、会社選びのコツはありますか。
 
新井:仕事は「誰と働くか」が大事。業種や規模ではなく、その会社で社員がどんなふうに働いているのかを見てほしいです。自分の力を発揮できる会社に出会ってほしいですね。
 
坂井:「仕事は楽しくない」と思う若い人が多いようです。そんなことはありません。仕事は自分を成長させ世界を広げてくれるもの。まずは自分という個性を大切に。そして、個性を尊重してくれる会社を選んでくださいね。