インタビュイー
荒木 義人 マーケティング・商品企画部 商品企画一課係長
1987年京都生まれ。京都産業大学経営学部卒。就職の際の自己分析の結果、お客さまの困りごとを解決する「提案営業」ができる会社としてイシダを選んだ。入社後は東京で営業を10年、その後京都本社の商品企画部へ異動し、営業経験を活かしたモノづくりに取り組む。
上原 敏昭 開発部門第二開発部 流通開発三課主任
1989年京都府生まれ。九州大学工学部機械工学科卒。子ども時代からアニメ「ゾイド」などの影響で、機械による自動化に興味を持つ。イシダは会社として安定してよい事業を行っているのと、食品業界であることに魅力を感じて選んだ。入社以来ずっと開発部に所属、包装機設計チームで活躍する。
※肩書・プロフィールは取材当時のもの
京都に本社を置くイシダは、世界トップレベルの計量包装機器メーカーだ。BtoB企業なので直接消費者との接点はないが、スーパー等で並んでいる商品の多くに、イシダの技術が関わっている。創業以来130年、国内外のシェアはトップクラス、アジアや欧米など世界120か国に事業を展開する文字通りのリーディングカンパニーだ。
今年2月15~17日に千葉の幕張メッセで行われた「スーパーマーケット・トレードショー2023」は業界人が真っ先に情報を得る場所で、関連各社はこぞって新製品を展示する。今回イシダは「環境対応、資材コスト削減、働き方改革」の3つを出展テーマに掲げ、若手で構成されたイノベーションプロチームが手掛けた製品を披露した。
その開発に関わった2人に話を聞いた。
荒木義人さんは入社13年目の35歳。入社以来営業畑を歩み、3年前に商品企画部に異動となり、営業での経験を活かした商品企画に取り組んでいる。
もう一人は技術者の上原敏昭さん。入社9年目の33歳で、開発部門に所属し、食品を自動で計量、包装、値付けする機械の設計に携わる。肉と魚では包装のノウハウが違い、スライスの仕方でも形態が変わる。それをいかにきれいに、シンプルな機械で行うか?その設計に尽力する日々だ。
「今回の出品の目玉は、スーパーでの食品包装機にAIカメラをつけて食品を自動で判断、値付けラベルの貼付ミスを防ぐ製品です。社内でイノベーションプロチームを立ち上げ、お客さまの困りごとを抽出して開発しました」と荒木さん。
イノベーションプロチームとは若手が主導するプロジェクトで、昨年創成。ベテランも多いイシダだが、あえて30代の若手が中心となって、お客さまが感じている問題点や困りごとを広く集めて分析、何段階ものデータ解析を経て、開発商品のねらいを絞った。
今回の開発で聞こえたユーザーの声は「値付けラベルの貼付ミスの頻発」。人手不足を背景に、作業に不慣れな働き手が増えたこともあり、たとえば精肉部門の場合、牛肉なのにラベルに豚肉と貼られるようなミスが多発する悩みがあった。そこで、カメラの画像から、AIが商品名を牛肉と識別。作業者が呼び出す商品名が正しく牛肉になっているか照合し、相違があれば警告を鳴らし、ラベルの貼り間違いを防止する機能を開発することになった。
「モノを売りたい営業の視点、その先にある実際に機械を使うお客さまの困りごとを知る荒木さんが、チームを引っ張り、問題点を掘り下げてくれたからこそ、できました」と語る上原さん。
一方の荒木さんも「上原さんは視野も広く技術者として頼りになりました。お客さまの声を実際のモノづくりに反映できて意義のあるプロジェクトでした」と語り、まさに、営業と商品企画と開発の三部門が三位一体となり、今回の製品開発に結び付いた。この製品には誰でも簡単に使える機能だけでなく、食品の包装に必要な資材の使用量を減らすことで、環境への配慮やコスト削減への思いも込められている。
同じモノづくりのゴールに向けて協力して結果を出し「一緒にやれてうれしい。一人ではできなかった」さん、上原さんは口を揃える。
このようにじっくり時間をかけ、若手を活用する風通しのよさは、なかなか他の企業には見られないイシダの特徴だ。「若手が活躍するイシダ」は、こうして生まれるのだ。
ミニコラム
若手が意見を出し合えるイノベーションプロチーム
イシダ社内で2022年に初めて立ち上げられた若手によるチーム。お客さまの困りごとを吸い上げ、解決するための問題点を抽出。商品企画と開発がタッグを組んで、イメージや感覚からではなく、時間をかけて緻密な分析を行い、お客さまの声をモノづくりに反映し、実際の商品開発や改善に結び付けるプロジェクトだ。この2月のスーパーマーケット・トレードショーで初めてその成果が公表された。社内にベテランは多いが、それをあえて若手に任せるプロジェクト。若手も力がつき、ベテランが気づかないこともできる、このような取り組みをするのがイシダの強みだ。