インタビュアー
大久保 尚容 抱月工業株式会社 代表取締役社長
弓指 利武 抱月工業株式会社 執行役員CHRO経営戦略室長
インタビュイー
鷹尾 心優 電子工学科4年
在学生で初、アプリを開発する企業を設立。
北林 碧 都市工学科5年
原点は明石海峡大橋。安全な橋をつくりたい。ケント紙で橋をつくり強度の違いを計測した授業は印象的でした。
石川 暖人 機械システム工学専攻1年
マシニングセンタに一目惚れ。夢は機械設計開発エンジニア。
荻野 美生 電気工学科3年
パワエレ系の国際会議で英語でプレゼン。
松本 桃華 応用化学科2年
海外留学も視野に薬の研究開発をしたい。
※肩書・プロフィールは取材当時のもの
未来を支えるエンジニアは知的好奇心から生まれる
神戸市立工業高等専門学校は、1963年の創立以来、5年間の一貫教育で「ものづくり」を支える技術者を育成。特に、起業家精神を育てる取り組みを積極的に導入している。神戸高専の道平雅一(みちひらまさかず)先生はこう話す。
「自らの技術を用いて地域の社会課題解決に取り組み、地域活性化に貢献する。そんなエンジニアを育てるために全学科でデータサイエンスや課題解決型教育にも力を入れています」。
近年、アントレプレナーシップ(起業家精神)は注目されている。企業の枠を超えた環境・社会問題解決への新たな価値観を創造するという期待がある。
「デジタルやエネルギー、環境の知識とアイデアで未来を突破する力をもったエンジニアを目指してほしいです」。
神戸高専初の在学中に起業した鷹尾さんをはじめ、学生たちがめいめい自発的に自分の興味を突き詰める姿を見て、抱月工業株式会社の2人はこう締めくくった。
「問いの立て方に感心しました。夢に向かって進んでください」(弓指)。
「自由な校風で、責任を持ち開発する姿が素晴らしい。活躍されることがしみです」(大久保)。
学生たちの好奇心を重んじる教育が、未来を支えるエンジニアをつくる。そんな予感のある取材となった。
神戸市立工業高等専門学校(神戸高専)の5人の生徒たち
鷹尾 心優さん(19)
電子工学科4年
パソコンが好きで、「パソコンがどう動いているのか」、プログラミングに興味をもちました。昨夏、バイト先の料飲業界の人手不足という課題を解決するアプリを手がける会社を設立しました。当初は軽い気持ちでアプリ開発を始めましたが、本気で業界を変えるためには持続的な開発が必要だとわかりました。そのためには、無償で協力してくれている仲間への報酬が必要だと感じ、起業することにしたのです。大学進学後も会社は続けます。

北林 碧さん(19)
都市工学科5年
子どものときに父親に連れられて初めて明石海峡大橋を渡ったとき、「大きいなあ、これを人間がつくれるんや」と衝撃を受けました。以来、橋ひと筋。進路は防災も学べる神戸高専一択でした。先日、大学の授業で明石海峡大橋を見学、人々の安全と交通を支える橋梁の構造にあらためて感動。これから少子化社会で技術者が不足します。そんな未来に保守がしやすく、安全で老朽化にも強い橋を開発、研究したいと思います。

石川 暖人さん(21)
機械システム工学専攻1年
幼い頃から乗り物やラジコン製作が好き。親や担任の先生に勧められて神戸高専を見学、マシニングセンタ(切削加工機械)が動く様子を見て、進学を決めました。学校は自由度が高く、好きなことをさせてくれるので、「自分で考え、責任をもつ」姿勢が身につきます。昨年、5軸マシニングセンタを自作して、機械の動きをリアルに知ることができました。大学院に進んで、機械の設計・開発をするエンジニアになりたいです。

荻野 美生さん(18)
電気工学科3年
おもちゃの分解や、機械の修理の様子を眺めるのが好きな子どもでした。手を動かして実践を学べる神戸高専に。入学前の想像通り、毎日が充実しています。1年のとき、大学生や研究者に交じって国際的な学会に参加しました。すべて英語で大変でしたが、ポスター発表もできました。クラス42人中、女子は5人と少数。真面目で誠実な子が多く、みんな仲がいいです。将来は人々の悩みに応えられ、役に立てるエンジニアになりたいです。

松本 桃華さん(17)
応用化学科2年
小学生の頃、病気が薬で治ることに「すごい」と感動。将来は薬を作る人になる、が目標に。神戸高専ならそれができると中学校の先生から聞き、進学しました。授業は毎週実習があり、楽しいです。自分の実験が、求める数字とぴったり合ったときは最高です。高校生では使わせてもらえないような薬品で実験できる、恵まれた環境です。先輩から「研究者は海外留学を経た人が多い」と聞き、私もその道を目指します。
