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株式会社マツヤスーパー

そんな学生の心情を、スーパーマーケットで考える!

ルーチンワークではなく、変化のある仕事がしたい。そう考える尾嵜さんは、スーパーマーケットにある種の先入観を持っていた。「毎日同じものを売り、同じ仕事をしているように感じます」。その疑問を、食品担当バイヤーの須甲さんにぶつけた。

インタビュアー

尾嵜さん 京都産業大学 3年

ルーチンワークはいや

中石さん 京都芸術デザイン専門学校 2年

デザインするのが好き

インタビュイー

髙谷 歩さん マツヤスーパー 管理部 部長

須甲 直哉さん マツヤスーパー 第二商品部 食品担当バイヤー

※肩書・プロフィールは取材当時のもの


「値下げ」はルーチンワーク?

「実際は変化に富んでいます。売り場は商品や並べ方でも刻々と変化し、何が喜ばれ、どう仕掛けるかを常に考えるので、同じ日はないのです」と須甲さんは答える。

その一例が、夕方のスーパーで見られる値下げだ。定刻になると一律に「〇円引き」とする店もあるが、マツヤスーパーでは毎日どの値引きの仕方がいいか見極めている。その日の天候や賞味期限の長さで、売れ方が変わるからだ。牛乳ひとつでも「値引きのときは時間帯と量、消費期限の残り日付を経験に基づいて計算し、スタッフ同士で相談しながら、値引きをします」。

お客さまに「気持ちよく買っていただく」ことと「少しでも高く、売り切りたい」という企業の思い。その分岐点を見極めるのが、社員の仕事だ。

「スタッフ全員の経験も総動員。完売時の達成感は大きいです」。

人の感情や思考を熟考した、「行動経済学」の実践だ。「ルーチンに見えることも、深い知見や考えに裏打ちされているのですね」と尾嵜さんは驚いた。

棚も通路も「デザイン」

中石さんは尋ねる。

「スーパーマーケットはデザインの仕事とはあまり関係ない気がします。POPやチラシならわかりますが」。

「おおいにあります」と答えるのはマツヤスーパーの髙谷さん。店舗のデザインは人の消費行動を後押しする「行動のデザイン」が基本だ。動線やレイアウト、商品の置き方こそ、まさにデザインされているのだ。

たとえば野菜や鮮魚、肉類などの日常必需品は、店内を回遊してもらえるよう壁沿いに配置。目を引く通路入口の棚は、特売や季節商品を陳列。この日はそうめんフェア。そうめんの横にはめんつゆや乾燥ねぎなど関連商品を陳列。さらに今年新登場の「そうめんふりかけ」も並べるのだ。

「1つの場所にまとめれば、お客さまにストレスがない。さらに、思わず『ついで買い』してもらえるような提案ができる。それがマツヤスーパーにおける、デザインなんです」。

デザイン領域の広さに驚く中石さん。「デザインって深い。そこまで考えているのですね!」。

棚にもデザインの工夫がある。一番上と一番下には段差をつけ、視線の角度で商品を見えやすくし、取りやすさも実現。ペットボトルの棚には傾斜をつけ、1本取ると残りが自然に前に移動。他にも商品の入れ替えがしやすいよう棚ごと回転できる仕掛けがある。

高い給料と、働きがいが共存する理由

2人が切り出したのが給与のことだ。マツヤスーパーの給与は大卒29万円。26年卒新入社員初任給の上場企業平均24万1千143円を大きく上回る水準だ。

その背景には、マツヤスーパーの堅実な経営方針がある。年間売上高は230億円、1店舗あたり売上高28億円強。大手スーパーマーケットを含む全国平均が同14億円のなか、他店の約2倍の業績をあげている。

「利益は社員の給与など待遇面に還元したい。そして商品の自動発注など機械にできることは任せ、働きやすい職場を実現する。すると社員が笑顔で働けるから、さらに業績があがる。この好循環を目指しています」と髙谷さん。その説明に2人はうなずく。

「でも、もっと大事なのは、モチベーションは何か、ということです」と髙谷さんはつづける。寓話のレンガ職人の話を紹介した。同じレンガを積む3人の職人に「なぜその仕事をしているか」と聞くと、「親方に言われたから」「金のために」「大聖堂を建てて、社会に貢献したいから」と答えが分かれた。3人目の職人は歴史に名を残す仕事をしたという。同じ仕事でも志のもち方で、働く意味はまるで変わる、という話だ。

マツヤスーパーが大切にしているのは、お客さまの「普段の食生活を満たすこと」。いつ訪れても商品が新鮮、通路が広く買い物カートがぶつからないなど、ストレスのない買い物環境づくりから、顧客満足を目指している。

「3人目の職人のように、自身の仕事に大志を持って臨み、努力を積み重ねることが、結果として会社の売上向上につながる。それがマツヤスーパーの理想で、仕事のおもしろさです」。

この訪問で、2人はスーパーマーケットという仕事への思い込みを一つひとつ手放していった。「こうに違いない」と決めつけていた業界に、実は自分の感性が活かせる仕事がある。そんな新しい発見があった

マツヤスーパーでトップクラスの売り上げを記録する山科三条店にて。

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