製造系 ニッチトップの強みアイデアが光る仕事 コスメディ製薬株式会社
痛くない「貼る注射」で未来の医療を変える
インタビュイー

才原 一浩さん コスメディ製薬株式会社 開発部 化粧品開発課
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科卒。化粧品OEMメーカーを経て「自社ブランド製品の開発をしたい」と2022年入社。一児の父。半年間の育児休業中は離乳食づくりなど、苦手だった料理にチャレンジ。「料理をすると化学反応に気がつける。家事をしていると仕事にも活かせる発見があり、勉強になりました」。

木内 華奈さん コスメディ製薬株式会社 開発部 医薬品開発課
徳島大学 大学院先端技術科学教育部 物質生命システム工学卒。徳島に拠点をもつ製薬会社へ入社。その後、夫の転職に伴い京都へと転居したが、以前から注目していたコスメディ製薬の医薬品開発の求人を発見。「運命的な出会いを感じました!」と2023年に入社。
※肩書・プロフィールは取材当時のもの
痛みがなく皮膚への吸収効果が高いマイクロニードル
●いまどんな研究をされているのですか
才原 ニードルクリームや美容液など当社の技術「マイクロニードル」を使用した化粧品の開発に携わっています。
具体的には製品の処方開発、製品使用前後の肌水分量や弾力変化の測定器を使った評価、さらに製品が安心して世の中に出せるよう、法律に沿っているかを確認し、表示や表現をチェックします。
前職でもスキンケアやヘアケア製品の処方開発業務を担当していましたが、他社ブランド品の委託製造だったので、直接お客さまの声を聞く機会がほとんどなく、開発者として物足りなさを感じていました。
コスメディ製薬では、他社にはない独自の技術をもとに、市場に前例のない新しい自社製品が開発でき、お客さまからは「こんな美容クリームが欲しかった」と喜んでいただける。毎日充実しています。

木内 医薬品開発に取り組んでいます。チームで腰痛症などに対する全身痛み止めテープ剤のほか、さまざまな経皮吸収製剤を研究しています。
私は前職の製薬会社でも経皮吸収製剤の開発を担当していました。貼付剤がメインでしたが、皮膚から薬剤を送達するには、皮膚の表面にある角質層というバリアの突破が課題になります。バリアを突破する手段として、経皮吸収治療分野の最先端を走るコスメディ製薬の「マイクロニードル」に、かねてより注目していました。トップも含めて上下関係なく研究についての話ができ、風通しがいい。そんな社風も好印象でした。

●経皮吸収治療は飲み薬や注射と比べてどのような違いがあるのですか。
木内 現在、一般的な投薬方法のひとつとして飲み薬が処方されますが、幼児や高齢者、嚥下障害のある方は飲み込むのが難しく、また飲んだ後は有効成分が肝臓で吸収・代謝される(肝臓によって一部が分解されてしまう)ため、身体への吸収率は半分ぐらいになります。薬によっては、なんと90%近くも代謝・体外排出されてしまうのです。
一方、注射は薬が直接静脈に入るため、効果はすぐに表れますが、急激に効くことでめまいやふらつきなどの副作用が出やすいというデメリットがあります。
その点、経皮吸収治療は皮膚を通してゆっくりと吸収されるため、副作用も起きにくく、肝臓を通さないので吸収率も高い。何より注射に比べて痛みが格段に少ないので「経皮吸収治療=人にやさしい医療」として注目されているのです。
●医療を受ける側としては期待大ですね。
才原 子どもを病院に連れて行くと「注射がいや!」と大暴れ。予防接種などは親にとっても悩みの種です。
木内 経皮吸収治療は、実は当人だけでなくケアする側の負担も減らしてくれる心強い存在です。注射をいやがるお子さまのケースだけではありません。たとえば認知症の高齢者の方は「いつ薬を飲まなくてはならないか」を理解できないこともあり、周りが何とか飲ませようとして疲労困憊することも。「貼る薬」ならワンタッチ、いつ貼ったのかも誰にでもわかる。「ケアする側にもやさしい」医療なんです。

●まさに夢のような薬です。いつ製品化されますか。
木内 現在産学連携も含め、さまざまなプロジェクトが進行中です。医薬品開発は承認に時間がかかるので、私たち研究者も粘り強く取り組んでいます。
才原 当社は確立したマイクロニードル技術を製品として事業化するため、承認プロセスに時間がかかる医薬品や医療機器ではなく、短期間で製品化できる美容領域に展開しました。
「溶解型マイクロニードル」の最新技術である「タウリン結晶マイクロニードル」を応用したスキンケアシリーズも完成、好評発売中です。医薬部外品『京薬粧』シリーズに加え、今年、20~30代向けの『melnee(メルニー)』がデビュー。アクティブな毎日を送る若い世代の皆さんに向けた成分処方、使用感を実現したシリーズです。
世界初の技術「タウリン結晶マイクロニードル」は、美容成分タウリンを微細な針状に結晶化し、有効成分を内包させます。これを液剤やクリームに配合することで、塗るだけでニードルが角質層まで入り、内包成分とともに浸透させるスキンケア製品です。

製品名の由来はmelt(溶ける)+needle(針)から。
才原 フェイスマスクの開発で苦心したのは「とろみ」のある美容液をシートにうすく塗り広げる技術です。ヒントはスーパーで見かけたドレッシングなどの食品の成分中に含まれるとろみ成分。妻が使うアイライナーからも「薄くしっかりつく」技術に着想を得ました。研究のヒントは研究室だけではなく、日常生活の中にもあると実感しました。
「タウリン結晶マイクロニードル」の力でヒアルロン酸などの保湿成分が角質層まで届くので、ユーザーから「肌が変わった」「ツヤが出てきた」などの口コミもいただきました。化粧品は多くの人に「いい」と感じてもらうことが大事なので、「私が考えた、配合比などのバランスがうまく機能した」と手応えがあり、とてもうれしく思います。

●針が浸透するのは痛い? 怖いと思う人もいるのでは。
木内 ニードルコスメは類似商品も多く「痛いコスメ」としてトレンド商品となりました。しかし、当社の独自テクノロジーによる、皮膚中の成分でできた「溶解型マイクロニードル」は、痛くありません。人の皮膚には角質層というバリアがあり、分子量の大きいものはバリアに弾かれますが、マイクロニードルはそこを突破し、かつマイクロ単位の微細な針なので痛点にもあたりにくいのです。私も『京薬粧』を使用していますが、肌でスッととろけるような感覚があり、メイクのノリがまるで違います。
才原 そもそもタウリンは人の肌に存在し「栄養ドリンク」など飲む商品もあるほど、身体に取り込め、親和性のある成分です。内包するコラーゲンやヒアルロン酸も同様です。
医療も化粧品も痛い思いをする必要はありませんし、痛ければ続かない。痛みがなく、効果を実感できる製品をつくりたい、それが研究者としての思いです。
木内 当社のマイクロニードルは溶解型、非溶解型にかかわらず、使用される方の負担を軽減することを最優先に設計しています。「やさしい医療」を社会に提供する研究開発こそが私たちの使命だと考えています。
経皮吸収治療で、医療過疎問題も解決へ。
●今後の展開をお聞かせください。
才原 「塗るマイクロニードル」は、「貼るマイクロニードル」より使用部位の自由度が高く、世界が広がりました。この技術は美容・医療両面でさまざまな使い方が考えられます。今後はメンバーも増え、チーム研究へとステップを進める予定です。
当社の高い経皮吸収技術を応用して、まだ市場に存在しないヘアケア製品の開発など、新しい製品を生み出したいです。
木内 「塗るマイクロニードル」によるアトピー性皮膚炎治療の外用剤開発にも着手しています。私たちがマイクロニードル技術でめざす医療の未来は「貼るワクチン」の実用化です。実現すればワクチンの自己投与ができるようになり、患者さまの負担だけでなく、医療従事者の負担も減らせます。また「貼るワクチン」は常温保存ができるため輸送や保管も簡単になり、医師や看護師が不足する地域でも、ワクチン接種が可能になります。
患者さまが治療方法のひとつとして飲み薬と同じ感覚で経皮吸収製剤を選ぶことができる。経皮吸収治療がそんな存在になれるよう、研究を進めたいです。


