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株式会社マツヤスーパー

株式会社マツヤスーパー

売れているスーパーマーケット、策を練るのはバイヤーです

小売流通の花形といわれるバイヤーはワクワクする舞台 ( 店舗 ) をつくる脚本家でもある。 「必要なのは創造力」というマツヤスーパーの頭脳派バイヤーに話を聞いた。

インタビュイー

髙谷歩

髙谷歩 マツヤスーパー人事総務部課長

精肉と食品売場を経て今春まで 16 年間食品バイヤーを担当。「大 好きな菓子と酒に囲まれて楽しく 働きたい」と新卒入社。「この選択、大正解でした」。

※肩書・プロフィールは取材当時のもの


京都・滋賀に8店舗を持つ株式会社マツヤスーパーは、地元密着型の量販店だ。店舗当たりの年間売上高は約25億円と全国トップクラスを誇る。ちなみにスーパーの全国平均は14〜16億円なので、マツヤスーパーがどれほど堅実な会社なのか想像がつくだろう。

この好業績の秘密のひとつが頭脳派バイヤーの存在だ。商品はただ並べても売れるものではない。顧客に「欲しい」と思わせる商品セレクト、ワクワク感ある店づくり、「買いにきてよかった」という満足感があるからこそ、毎日お客さまに来てもらえるのだ。そうした商品の買い付けから値決め、売り方から販売終了まで責任をもつバイヤーは、まさに会社のブレーン、頭脳といえるだろう。

「もう一品」買ってもらうために

「商圏1~2kmのお客さまのニーズに応える」マツヤスーパーの使命は、「普段の食事の材料と生活に必要な消耗頻度の高い日用雑貨」の提供だ。ゆえに商品の平均単価は決して高くはない。例えば調味料や缶詰などの一般食品の平均単価は170円前後。売上を伸ばすには数が決め手となる。

「あともう一品買ってもらう。そのアイデアを練るのが本当におもしろいんです。努力の結果がその日の売上に出るから、達成感もハンパないですね」。

マツヤスーパー人事総務部課長の髙谷歩さんはバイヤーの醍醐味をこう話す。アイデアに欠かせないのが情報収集だ。

テレビで放映された商品はすぐに発注数を増やし、「いま話題の○○」とポップでアピール。新聞や雑誌の料理欄に載った食材は、店の入口やメインストリートなど目立つコーナーに。店独自の「メニュー提案」も効果大だ。主力商品とともに、複数の商品を手に取ってもらえるからだ。

「店がワクワク」→「お客さまも踊り出す」シナリオ

~仕掛けたのはごま油~

企画次第でガラリと変わる売上。 記録的大ヒットの 「ごま油」はこうして売れた。

1ヶ月前に商談。メーカーの担当者が来社、商品のコンセプ トや特徴を聞き、過去の売上実績などか ら大まかな価格や入荷数を決める。交渉に欠かせないのが信頼関係だ。メーカーの注目度も高い。「私も気合が入ります」と高谷さん。

2週間~1週間前に、試験販売で発注数を確立する。企画の内容を店長、チーフ、販売スタッフに伝え、まずは数店舗で試験販売。お客さまの反応をチェックし、メーカーへ正式に発注する。販売促進の商材やポップを準備し、売場のレイアウトを確認。いよいよ実地販売へ。

(試験販売で参考にするのがPI値(ピーアイち)。1000人 当たりの購買個数から商品の人気・支持度がわかる。PI値は1時間単位で算出されるため、商品の動きも一目瞭然。時間帯に合わせた仕掛けができる。)

販売当日、いよいよ全店に展開!販売後1週間、人気のディスプレイを全店で情報共有する。

企画の肝は「ごま油を使った簡単メニュー」の提案。ポップを掲示し、必要な材料 (ガラスープ、ピーマン、ツナの缶詰) を隣に並べ、お客さまの「メニュー素材全て買う」行動を促した。各店の販売動向を確認し、他店にも情報共有。

この「ごま油」は、たった1週間で1年間の販売本数を達成する快挙となった。

創造力は熱い思いから

バイヤーはあくまで店舗を支える裏方だ。お客さまに気持ちよく買ってもらう策を練り、それを実際に演じるのは店舗だからだ。

「これを売りたい! という熱い思い がスタッフやお客さまに伝われば、商品が爆発的に動き、計画通りに着地が決まる。バイヤーとはワクワク感を皆に伝え、売れる流れをつくるインフル エンサーでもあるのです」。

マツヤスーパーのバイヤーは8人。 青果、精肉、海産、惣菜、一般食品、 雑貨、日配、菓子・酒類の8つの部門に分かれ、一括して 店舗分の仕入れを行う。扱う商品は異なるものの、仕事の流れは共通だ。

人をワクワクさせる企画が好き。舞台を動かすプランナーになりたい。『三国志』なら諸葛孔明(しょかつこうめい)が好き、そんな人にバイヤーの仕事は絶対おすすめだ。

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