サービス・インフラ系 業界でオンリーワン人に会うのが楽しい 株式会社アドナース
突撃!学生が会社に聞いてみた~福祉業界の可能性~
インタビュアー
F 佛教大学3年生
ライターか編集者志望。実家はお寺だが、目下は家業を継ぐ予定なし。
H 京都女子大学3年生
建築を専攻、就活で悩み中。父が福祉関係の仕事をしている。
インタビュイー
廣瀬吉史 株式会社アドナース取締役
京都生まれの40歳。専門学校で福祉を学び、病院勤務を経て訪問介護会社へ。現在は3社目で、社員研修・採用人事・社員の健康管理など幅広い業務に従事。鎌田智広社長のもと、会社全体を統括している。
※肩書・プロフィールは取材当時のもの
訪問介護は利用者の人生の選択肢を広げ、自己決定権を支える仕事
F:福祉業界の募集を見ると「初心者歓迎」といった表記を見かけて、いつも人手不足のイメージがあります。
廣瀬:その通りです。医療の発達によって、介護があれば長く生きられるようになったことも要因の一つで、介護を必要とする人が増えたのです。専門的な仕事なので、初心者の方は研修が必要で、長時間の実習や研修を受けてもらっています。
H:そうなんですね。施設と訪問介護の違いはどこにあるのでしょうか。
廣瀬:訪問介護のメリットは、その人がどういう最期を迎えたいかに寄り添えることです。死ぬまで住みなれた家にいたい人ならば、障害福祉サービスを使って在宅で24時間ヘルパーをつけることも可能です。一方、施設には常に人がいる安心感があります。団体生活なので、食事や入浴の時間が決められていたり、他の同室者がいます。
H:訪問介護にするかどうかは本人の選択なんですね。
廣瀬:はい。2000年から施行された介護保険を利用すれば、訪問介護の方が施設よりも利用者さんの負担額は軽くなることもありますよ。なにより、介護される方々は長い人生を生きておられて、それぞれの人生観をお持ちです。施設入居か在宅介護かは、ご本人の自由選択の問題ですね。
F:訪問介護は、同居する家族の方にはどう受け止められるのでしょうか。
廣瀬:一般的に、介護は同居のご家族なしではできません。施設か訪問介護かは、ご家族の状況を含めての選択となりますね。
F:介護って、家族だけで世話をするのは限界がありますか?
廣瀬:はい。家族だけでは遅かれ早かれ限界がきます。ショートステイなどを利用して、介護から家族が解放される時間をもつことは絶対に必要です。
F:高齢者やその家族の選択肢が増えるのが大事なんですね。
廣瀬:そうです。Fさんは日々、何を食べていつ寝るかなど、自己決定して暮らしていますよね? 高齢や障がいがあっても同様です。高齢者は全員が早起きというわけではなく、実際は朝寝坊の方もいて、それなら訪問時間を遅くしようとか、私たちの対応も変わります。その人が暮らしたい生活をどう実現するかに寄り添うのが訪問介護の仕事。「あんたが来てくれてよかった」と利用者さんに言われるとうれしいです。人の人生の最期に寄り添えるのが介護職のやりがいの一つです。
将来性と、社会的価値のある仕事なのに、情報発信がまだ足りない
H:福祉の仕事は「キツい」といったネガティブなイメージがあります。
廣瀬:確かに介護には、トイレや入浴など人のプライベートなゾーンに関わる部分があります。そこにしんどさを感じる人はいるでしょう。しかしどんな仕事にもしんどさはあり、介護だけが大変とはいえません。また、介護を「生産性のない仕事」という人もいますが、誰もが事故などで障がいを負うリスクがあります。でも、介護福祉の仕組みがあるから、誰もが安心して働きに出られるのです。社会的価値のある仕事です。
H:お給料が安いというイメージもあるんですが。
廣瀬:そんなことないですよ! Hさんは、1か月に自分が必要な給料の額を答えられますか?
H:ええと......。
廣瀬:必要額の基準がないのに、高いか低いかを判断するのは奇妙ですよね。ぜひ、他の業種と比較してみてください。私は6人家族で、介護が必要な家族もいますが、働き手は私一人。でも、ちゃんと暮らせていますよ。
H:大黒柱でいらっしゃる!
廣瀬:しかし、そんなイメージを2人がお持ちだということは、私たちの情報発信が足りないのだと思います。「もっとカッコいい仕事やで~」と思ってもらえるようにしないと!(笑)
F:アドナースさんは、フリーペーパーを出したり、鎌田社長がラジオ番組をもったりなど、積極的に情報発信されていますよね。
廣瀬:はい、力をいれています。またお金の面でいえば、2014年の時点で介護業界は8.6兆円でしたが、2025年を迎える頃には18.7兆円と、倍以上の額になるといわれています。
F:将来性がある業界なんですね。
廣瀬:一方で人材は30万人不足しているといわれます。私自身、楽しく働いていることやお金のことを、もっと発信していきたいです。
「福祉・介護業界のイメージが変わりました!」
F:福祉業界への先入観がありましたが、クリエイティブな面を知りました。廣瀬さんがおっしゃっていたように、どんな仕事もそれなりに苦労がある。訪問介護は、尊厳や感情もある利用者の選択肢を広げるものだと理解できました。
H:介護の仕事はキツイというイメージでしたが、話を聞いて、専門性が高くプロフェッショナルな仕事だと思いました。長く生きておられる方の人生の最期に関わる貴重な体験もできるという点は目からウロコです。おもしろそうだと感じました。