18歳~30代のための働くについて考えるWebマガジン

株式会社アドナース

株式会社アドナース

「アツい人、情熱が強すぎる人には向いてない」って本当?(株)アドナースさん、「福祉で働く」について教えてください!

「仕事って、情熱たっぷりに取り組む方がいいんじゃないの?」そんな常識を崩してくれたのが、訪問介護・看護で知られる(株)アドナース。福祉に向く人材について聞いてみた!

インタビュアー

桒原詩乃

桒原詩乃 佛教大学 社会福祉学部 2年生

人とかかわる仕事を目指し福祉系学科に進んだ。

湯浅真朱

湯浅真朱 京都市立 紫野高校2年生

中学のときデイサービスで職業体験をして福祉に興味を持ち、福祉学科への進学も検討中。

インタビュイー

鎌田智広

鎌田智広 株式会社アドナース代表取締役

大病院で看護師をしていたが「患者さんにとってもっと楽しいことをしたい」と思い退職。専業主夫を経て、2010年に訪問看護ステーション「アドナース」を立ち上げる。ラジオや雑誌でも情報発信中。

※肩書・プロフィールは取材当時のもの


中途半端な気持ちじゃダメ、の誤解

桒原: 人とかかわる仕事に就きたくて福祉学科に進みましたが、コロナの影響でオンライン授業ばかり。映像だけだとピンとこないんです。

鎌田: 座学で制度や歴史ばかりだと、おもしろくないよね。わかります。

桒原: 実習先は「地域・医療・児童・障がい・高齢者」の5つの分野から選びます。友達を見ていると、高齢者と障がいは人気が低いようです。

湯浅: 私は現在高校生で、福祉系の学部への進学を検討中なので、大学の話を先取りして聞けるのは新鮮です。なぜ人気がないのでしょうか?

桒原: 中途半端な気持ちでは、できなさそう、というイメージがあります。障がいと高齢者は本気で福祉をやる覚悟がいるからだと思うんです。

鎌田: 本気の覚悟ですか。そこまで力を入れずとも、もっと肩の力を抜いてもらえるといい気がしますけれどね。

桒原: 私たち学生から見ると、一般企業は妥協で入社する人も多いと思うんですが、でも福祉業界は、医療のエッセンシャルワーカーと同じで、中途半端な気持ちではできないし、熱い思いが必要だと思うのです。

鎌田: 僕はアツすぎる人、情熱が強すぎる人が来たら、途中で燃え尽きそうだから面接で落とすかも(笑)。アツすぎる人って、利用者さんに進歩や成長とかを求めがちなので、必ずしも利用者さんにとっていいとは限らない。

桒原: えーっ!目からウロコ、社長さんがそんなことを言うなんて!

鎌田: 僕らアドナースは「個人で80、皆で100」という考え方。個人が全力を尽くさなくていい、そうでないと続かないですから。それに、福祉業界で働く人と、一般企業との大きな違いはないですよ。福祉にも妥協で就職した人はいます。実際、リーマンショックで多くの会社がつぶれた時代は、別の業界から福祉業界に転職してくる人も多かったですし。

湯浅: 確かに「福祉は転職しやすい、いつでも働ける」というイメージがあります。

鎌田: ああ、そのあたりは、正確に理解して欲しい部分です。人材不足ではありますが、プロフェッショナルな技術が不要という意味ではありません。入社してすぐに優れた介護ができるわけではない。初心者も働けるけれど、その先に明確な成長のステップがあるのが、介護業界の特徴です。

深いコミュニケーションを取る

桒原: いろんな人とコミュニケーションを取りながら働ける仕事に就きたいな、と思っています。

鎌田: 桒原さんの言う、他人とのコミュニケーションって、どれくらいの範囲の深さだろうか?たとえば駅員さん、あるいは販売や接客もコミュニケーションの一環だよね。

桒原: ああ、駅員さんというイメージではありません。なんていうのかな、もっと個別の人間性が伝わって、私にしかできないコミュニケーションができる仕事がいいように思います。

鎌田: そういう意味では、福祉業界は人との関わりがすごくありますよ。その人の、人生のより深いところに入っていき、人間の本質に関わることになるんです。そう言った深いコミュニケーションに手応えを感じておもしろいと思える人は、福祉に向いていますね。

桒原: 確かに深いですね。では、重度の障がいがある人とは、どうやってコミュニケーションを取ったらいいんでしょう?

鎌田: それは目の動きでも読み取れますよ。真剣に向き合って2~3週間一緒にいると、その人の求められていることがなんとなく感じられるものです。

湯浅: 今回、鎌田社長にお会いして、初めて家と施設とでの、介護の違いに気づきました。

鎌田: 高齢者施設は食事も入浴も決められた集団生活ですが、訪問介護は個人に寄り添ったサービス。行って顔を見せるだけで「ありがとう」と言ってもらえます。

湯浅: 自宅で介護されるのって、いいですね。

桒原: つらい思いとかはないですか?

鎌田: 相手に気持ちが伝わらないときもあります。でもそれって一般企業でも同じですよね?この仕事がいいのは、それ以上にうれしいことも多い。高齢の方々からは圧倒的に本気の「ありがとう」が返ってきます。

桒原: 確かに普通の仕事をしていても怒られることやクレームはありそう。一般企業と福祉を分けてとらえすぎていた自分に気づきました。

湯浅: そういえば、私、お店で買い物したときに「ありがとう」って言えているかなあ?コンビニとかだと無言な気がします。「ありがとう」の言葉の意味の深さに気づきました。

取材学生の感想

桒原さん 「人とかかわる仕事を目指し福祉系学科に進みましたが、授業に興味が持てないでいました。この日の取材で、福祉業界に進むには特別な覚悟がいると思い込んでいた自分に気づきました。情熱が強すぎる人は敬遠されるということには、目からウロコ!」

湯浅さん 「福祉は力仕事というイメージがありました。力仕事もありますが、コツがあり補助する器具や機械もあるし、一般企業でも力仕事はある。先入観で福祉の仕事を特別と考えていたことに気づきました。訪問介護では何をしても「ありがとう」と言ってもらえる話、給料は他の業界と変わらないという話などを聞いて、もっと知りたいと思いました!」

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