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株式会社もり

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京つけもの「もり」がおもしろい!前編 ~地域で愛され、全国・世界へ。~

京都のおいしい漬物屋「京つけもの もり」をご存じだろうか? 独自の道を突さ進んで成長する、個性が光る企業だ。前編である今回は、「地域貢献」の観点からそのユニークさに迫る。

インタビュイー

森 義治

森 義治 株式会社もり 代表取締役

※肩書・プロフィールは取材当時のもの


自社農場で野菜を栽培する徹底ぶり!

 「駅の売店に並ぶ、さまざまなメーカーのお漬物。そこから会社の違いはわからない」、そんな人も多いだろう。 しかし地元京都に根差す「京つけもの もり」の経営方針は一風変わっている。

 1962年に創業し、現在は16店舗 を展開する「もり」。その最大の特徴は、京都府亀岡市に約6千坪の自社農場をもっていることだ。6千坪とは、サッカー場約10面分の広さ。年商9億円という規模がありながら、本格的に 自社栽培の野菜を使う漬物会社は多くない。

 「農業を始めたのは、『おいしい野菜からしか、おいしい漬物は作れない』 という創業者の教えに基づきます。自社農園を開設した1989年以降、30年以上、失敗と成功を重ね、野菜を育ててきました」。

 こう話す2代目社長の森義治さんは、自身も畑に立つ。働き者の父である先代を見習い、夜明け前から農作業に励む日もめずらしくない。

 自社農場だから、作付け野菜は自分で決めることができる。たとえば青味大根や聖護院かぶらなどの京野菜は生産農家が減り、絶滅が危惧されていた。これらを「もり」が育てることで、種が保存でき、京野菜の復興につながっ た。「一般的な大根より、香りも歯応えも優れて、ご祝儀用として重んじられていた青味大根。現在、栽培しているのはうちだけです。それは私たちの作る漬物の個性につながっています」。

 純粋な漬物のおいしさの追求が、京野菜の復興という貢献につながり、同時に「もり」でしか手に入らないオンリーワンの魅力にもなる。そんな地域貢献を実践するのが「もり」なのだ。

京ぴくるすシリーズ:京都の老舗お酢メーカーの村山造酢とのコラボ。
かわいい瓶詰めが人気。

京都の漬物が観光客に人気、 その火付け役に

 一方で、京都に来る日本人観光客に、「最も人気のおみやげは漬物」である事実(※)はあまり知られていない。歴史をさかのぼると、他社に先駆けて、「もり」は京漬物を観光客に販売し始めた。

 きっかけは1975年にオープンした東映太秦映画村(以下 映画村)。その7年前、映画村のすぐそばに太秦本店を構えていた「もり」は、映画村開業を機に、館内でテナントを出店する。 当時、映画村には観光客も大勢来て、「もり」の漬物は大盛況。しかし、森社長は「意図的ではなかった」と当時を振り返る。

 「近所の人たちに『おいしい漬物を売ってほしい』と頼まれたから、出店したのです。私たちもこれほどまで観光客に漬物が人気になるとは思いませんでした」。

 意図せぬ好展開は他にもある。今や一大観光地として知られる嵐山に出店したのも「本店に近く、ご近所で売上を伸ばせたらと思ったからです」。そんな独自の挑戦は、嵐山が京都を代表する観光スポットとして、人気が上がるとともに成功をおさめる。

京都おりーぶシリーズ:
漬物の概念を覆す、現代人好みの和洋折衷な漬物が
新感覚と評判。

 「もり」は、観光客など多売につながる客だけを対象にしていない。いつも買い物をしてくれる、地域の人たちを一番に考えた結果が、販路拡大につながってきたのだ。

「物ごとは内側を大切にしてこそ外側に広がる。先代の言葉です。私たちが大切にするのは、まず地元の人たちと、地域に生きる従業員。だから『京都で人気の漬物を、観光客にも召し上がっていただく』。この感覚で、おみやげ物として漬物を販売しています」。

「子どもに食べさせたい」 漬物を作る

地域に根差す「もり」だからこそ、作る商品にもその思想が表れる。「端的にいえば、自分の子どもに安心して食べさせたい。そんな漬物だけを作っています」と森社長は語る。

 実際、漬物は手軽においしく野菜を食べられるだけでなく、熱に弱い野菜のビタミン類が、豊富に摂取できるという長所がある。さらに、従来、塩分が多いという漬物のイメージを、くつがえす商品企画も進めてきた。「産学連携でGABAや減塩など健康訴求の商品も生み出しました。これも業界ではうちが初めてです」と森社長は話す。

 観光都市京都において、全国へ、世界へと広く展開しながらも、地域で愛され、地元で生きる京都の漬物専門店。地域貢献のひとつの形として、今後も注目していきたい企業だ。

「森の恵み」GABA漬物:
京都で初めて、昔ながらの漬物で「機能性表示食品」の認定を取得 
減塩「かるしお」シリーズ:
漬物で初、国立循環器病研究センター認定の漬物。
減塩とおいしさを両立。
「健康のために塩分を控えたい」という人たちに向けた。

(※)日本人観光客の約35%が漬物を購入。京都市産業観光局による「令和4年(2022)観光客の動向等に係る調査(本冊)」45ページより。

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