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株式会社マツヤスーパー

株式会社マツヤスーパー

チラシはお客様への招待状です ~消費者心理をマツヤスーパーに学ぶ~

消費者が商品を購入する際に、どんな要因が影響するのか? 消費者心理に興味をもつ学生が、消費の最前線に立つマツヤスーパーに話を聞いた。

インタビュアー

古賀 菜々子

古賀 菜々子 同志社大学 商学部 2年生

後藤 愛実

後藤 愛実 立命館大学 食マネジメント学部 3年生

インタビュイー

髙谷 歩

髙谷 歩 株式会社マツヤスーパー 人事総務部部長

※肩書・プロフィールは取材当時のもの


売り手の意図が込められたチラシ

地域の人々に広く支持されている小売業のマツヤスーパー。京都・滋賀に8店舗を展開し、一店舗あたりの年間平均売上高は約27億円と業界トップクラスの実力派だ。

今回のテーマは「消費者心理」。「消費者心理を想像して作るのがチラシです」とマツヤスーパーの髙谷歩さん。マツヤスーパーでは定期的に新聞折込みやwebでチラシを発行している。学生からの「チラシと消費者心理には、どんな関連性があるのですか?」との問いに、髙谷さんはこう話す。

「チラシはお客さまへの招待状です。『特価商品をたくさん取り揃えました。どうぞお越しください』という売り手からの呼びかけなのです」。

実際に店頭で、チラシに掲載されたネーブルオレンジが、飛ぶように売れるのを目の当たりにした学生たち。

「消費者は価格に敏感です。そして 『来店されてから売り場で、その日の夕食の献立を考える人が7割』と言われます。その心理を踏まえて、特価商品は必ず野菜と肉・魚を組み合わせています」。

そう聞いてチラシを再度見ると、その通りの組み合わせが並ぶ。「現場では、営業時間中に特価商品を品切れさせない努力をしています。なぜなら訪れたお客さまをがっかりさせたくないからです」と髙谷さん。チラシを読む時、来店した時。消費者心理を入念に分析して、売り場と連動させる。そんな姿勢が伝わってくる。

食品ロスとチャンスロスの関係

学生から「食品ロスはどのように減らしていますか?」との質問が出た。

スーパーマーケットにとっての食品ロスは、売れ残り品の賞味期限が切れること。利益が激減する悩ましい問題、と髙谷さんは前置き、具体的な方策を挙げた。「売れ残りが出ないための工夫を重ねています。ひとつは早めの値引きです」。例えば牛乳の賞味期限は1週間のため、早めに「2%引き」の値引きシールを貼って価値ある価格を訴求する。

「200円の2%は4円。『4円引き』より『2%引き』の方が、より安いような印象を与えませんか?」髙谷さんの説明に、学生たちはうなずいた。まさに消費者心理を突いた表記の工夫だ。

売れ残りを減らす方法は他にもある。予定よりも商品の売れが鈍いときは要注意だ。この場合、お客さまの視界に、商品が入っていないことが多い。

「目立つ場所に移して、ハンドマイクで店内放送をして気づいてもらう。それだけで売れ行きは変わります」。

さらに髙谷さんは、「食品ロスと同様に、私たちは『チャンスロス(機会損失)』も減らしたい」と話す。

「食品ロスをゼロにしたいなら、確実に売り切れる量だけ販売すればいい。でも、それでは遅い時間に来店したお客さまが、購入する機会を失うこともある。それは避けたいのです」。

店にとってチャンスロスは深刻だ。単に売り上げが減るだけではなく、「この店は商品がない」と判断したお客さまが、二度と足を運ばなくなる可能性もあるからだ。食品ロスとチャンスロス――。双方を取り巻く消費者心理を、スーパーマーケットが熟考していることを、学生たちは学んだ。

気持ちよく買い物ができる環境とは

マツヤスーパーは、快適な買い物環境を重視するため、消費者の心をつかむ要素も研究する。「たとえば、BGMで売り上げは変わりますか?」に髙谷さんはこう返す。

「音楽は、買い物中のお客さまの邪魔をしない曲を選んでいます。軽快なBGMにすると売り上げが上がる、などの印象はないですね」。むしろ売り上げに影響するのは、期待を裏切らない品揃えだ、と髙谷さん。

「お客さまがどんな商品を求め、何を喜ばれるのか。普段の会話や売上から分析。最新ニーズをキャッチし、その商品をいち早く入荷します」。

マツヤスーパーは、実際に来店客をリサーチして、喜ばれる品揃えを実現。 そこから快適な買い物環境を作る。

「品切れがない、商品が豊富で手に取りやすい、通路にある商品が整頓されてショッピングカートがぶつからない――そうしたストレスを感じない売り場なら、お客さまに『また来たい』と思っていただけるのです」。

買い物に関わる多くの消費者心理を分析、快適な買い物ができる売り場作りを実践するマツヤスーパー。その企業努力に気づいた学生たち。最後に髙谷さんは締めくくった。

「お客さまに満足していただくことで、おのずと売上が増える。そんな関係を目指しています。私たちは、毎日、買い物する人の心理を考えています。消費者心理に興味のある人はきっとおもしろい職場だと思いますよ」。

感想

株式会社マツヤスーパー 人事総務部部長 髙谷歩さん

企業の根幹をなすのが企業理念です。マツヤスーパーの理念は「お客さまの普段の食生活を支える」です。この使命に共感し、大事にしようと思うからこそ、働いていて楽しいし、お客さまも評価してくださる。就活で悩んだら、その企業の理念に、自分が共感できるかどうかも考えてみてください。

同志社大学 商学部 2年生 古賀菜々子さん

リアルな消費者心理を学べました。消費者心理に興味があり、今回、小売の現場のお話を聞けておもしろかったです。スーパーマーケットの経営には現場に即した緻密な数値分析が欠かせないことがよくわかりました。それをスピード感をもって実現させているマツヤスーパーさんに、大きな魅力を感じました。

立命館大学 食マネジメント学部 3年生 後藤愛実さん

おいしさを伝える仕事っておもしろい。雑談のなかで、売り場で「おいしそう!」と商品のりんごをかじってしまった子どもがいると聞いて、びっくり。子どもが手を伸ばすほど、その食べ物の魅力が伝わる売り場ってすごいです。おいしさを伝える仕事なんですね。

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