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株式会社特発三協製作所

株式会社特発三協製作所

大阪工業大学 工学部材料加工研究室を特発三協製作所 片谷勉社長が訪問!

ステンレスの薄板ばねをつくる特発三協製作所の片谷勉社長が、アルミニウムの加工研究室・羽賀俊雄教授を訪問、「金属を使うものづくり」について、熱く語り合った。

インタビュアー

片谷 勉

片谷 勉 株式会社特発三協製作所 代表取締役

兵庫県出身。大学卒業後、IT系企業のSE・営業職を経て1996年入社。2002年から現職。特発三協製作所の創業は 1959年。精密機械に欠かせない「薄板ばね」を製造する専門メーカーで、国内外からの視察も多い。片谷社長で3代目。

インタビュイー

羽賀 俊雄

羽賀 俊雄 大阪工業大学 工学部 機械工学科 教授

埼玉県出身。早稲田大学理工学部機械工学科卒、同大学大学院理工学研究科機械工学専攻修了。2005年より現職。昨年と今年、スタンフォード大学とエルゼビアによる「世界で最も影響力のある研究者トップ2%」に選ばれている。

※肩書・プロフィールは取材当時のもの


「手でつくる」を学びものづくりの力を高める

片谷: 驚きました。大学なのに5軸マシニングセンタやレーザー切断機など大型新鋭機が揃う。恵まれた環境です。

羽賀: 新しい機械も入れていますが、昔の機械も使います。古い機械には、実際に「手で動かす」よさがあります。

片谷: 共感します。当社はステンレス製薄板ばねのメーカーですが、実際にステンレス板を切って触って動かして、素材の特性が理解できるのです。

ロボットプロジェクトの1年生の課題

羽賀: 特発三協さんは自動車や家電など、あらゆる機械に使われる「薄板ばね」の業界トップクラス企業。40台の加工機械が稼働しているそうですね。

片谷: 多いものは1日5万個量産の機械もありますが、そこに至るまでの試作品の調整は手作業です。

製造の方法について片谷社長から質問が飛ぶ。

羽賀: 手は大事です。大学では陶芸の授業もあります。粘土をいじり、ものの形や美しさを認識するのはものづくりの原点です。今の若者は、デジタル化が進んだせいか、空間認識が僕らの頃より弱い人が多い。データ上でCAD製図はできても、実際に立体の「もの」に落とし込む時点でつまずいてしまう。

片谷: わかります。当社の入社試験では「折り紙」をさせることもあります。ものづくりのセンスがある人は、山折り谷折りがわかっていてうまい。
羽賀:やはり人間は、手を使わないといけませんね。

ステンレスとアルミ金属加工の共通点

「鳥人間コンテスト2023」の人カプロペラ部門で、入賞を果たした「人力飛行機」。

片谷: 大工大のキャンバスに入ると、人力飛行機が目を引きます。

羽賀: はい、今年の「鳥人間コンテスト」で3位に入賞しました。つくることで設計、機械加工、プログラミング、チームマネジメント、資材調達を学びます。また、近くの町工場に交渉して部品を調達したり、使用済み飛行機の部品を使ったりすることで、材料を探す力や交渉力、リサイクル配慮の目を養います。

片谷: 資材調達から行うのですね。プロジェクトマネジメントの力が身につくでしょう。実践的な学びですね。

「薄板作製用連統鋳造機」でアルミの薄板を作る様子の説明を受ける。
鋳型を使った製造法も学ぶ。

羽賀: 私の「材料加工研究室」では、アルミニウムの薄板鋳造の研究をしています。アルミは強度や軽さ、加工性から自動車や航空機などに使われます。研究室にある「薄板作製用連続鋳造機」はアルミの薄板を鋳造する省工ネルギー型機械で、すべて学生がつくりました。

片谷: すばらしい!

羽賀: 自分たちでつくった装置で加工性に優れたアルミ板の鋳造を目指します。最初は失敗続き。200回は実験します。

片谷: アルミの素材の特性ですね。やってみなければわからないのは、私たちがばねの材料とするステンレスも同じです。「ものづくり」をしている人間が共通して苦労する点ですね。

羽賀: 成果にたどり着くまで、粘り強く取り組む。そこも同じですね。

5軸マシニングセンタとは、従来のXYZの3軸に回転、傾斜の2軸を加えた切削加工機。複雑な3次元加工ができる。

大学と企業の連携で学生と技術者が接点をもつ

羽賀: 今後、危惧するのは町工場の減少です。町工場それぞれがもっているオンリーワンの技術がなくなると、困る企業はまちがいなく増えます。

片谷: 町工場の継続の難しさには高齢化や人手不足など、さまざまな要因があります。日本を支える「ものづくり」が衰退すれば国力も衰えます。地域を超えた連携や社会的な議論も必要でしょう。

羽賀: 大学が地域や企業と連携することで学生が学ぶことも多いです。企業との共同研究では、技術者の知識の豊富さに「自分はまだ何も知らない」と気づき、また厳しく新装置の開発期限を守る中で、手を動かし実験する力がついていくのです。

片谷: 私たち企業側もまた、学生さんと接することで、新たな発見や気づきがほしい。大学の研究室に期待しています。

羽賀: 現場で活躍できる技術者の育成が大学の目標です。たとえば学生が自分で描いた図面で、町工場に部品製作をお願いしても、最初は工場の技術者に「こんな図面じゃつくれないよ」と叱られる。その経験はすばらしい学びです。

片谷: 確かに。学生の学びにおいて、熟練した技術者を含め、他者からの気づきは多いですね。例えばコンテストならライバルがいて、自分がどのレベルにいるかを、審査員から教えられる。そうした体験は、社会に出たときに必ず役に立ちます。

羽賀: そうですね。ものづくり企業を率いる片谷社長のお話は興味深いですから、もっと学生に聞かせたいです。

片谷: ありがとうございます。学生との対話は、私にとっても楽しみです。

羽賀教授の「材料加工研究室」にて、学生たちとともに。アルミニウムの半溶解・半凝固加工と、塑性加エや鋳造に関する研究を行っている。

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