~おじおば人生の学びvol.03~「就職する?教員になる?悩める学生に送る自分を成長させる仕事の選び方」株式会社 特発三協製作所 片谷勉社長に聞いた
インタビュイー
片谷勉 株式会社特発三協製作所 代表取締役
1968年生まれ。IT系企業のSE・営業職を経て1996年同社入社。2002年社長に就任。趣味は硬式テニス、スキー、ゴルフ、スノボ、フルマラソン、トライアスロンと「広く浅く」派。
※肩書・プロフィールは取材当時のもの
――就職活動に悩みすぎて、働くことの楽しさを見失いそうです。片谷社長はどんな思いで仕事をされていますか。
確かに、仕事をしているとしんどい時は必ずあります。しかし、働いてお金をいただく=誰かの役に立っているということ。私の仕事の喜びは「ばねがほしい」という顧客の声に応え続けていることです。自分が必要とされているという実感こそが、人間力を磨きます。
――仕事や就職先を選ぶコツはありますか?やってみたいことが多すぎて絞ることができません。
3つのポイントをお伝えします。
まずは、自分の勘を信じましょう。みなさんは普段から、興味があること、やってみたいことに対してアンテナを張っているはず。アンテナに引っかかるということは、自分に向いているという証です。
次に、他人からのアドバイスに依存しすぎないことも大切です。そのアドバイスはその人だけの人生経験から導き出されたものだからです。誰かに決めてもらいたいと思う気持ちがあるかもしれませんが、自分の頭で考え、自分と向き合い、自分で選択するようにしたいですね。
さらに、未来の自分にとって必要なモノや技術がある仕事を選ぶこと。そうすれば、働きながら理想の自分像に近づくことができるでしょう。
――大学卒業後すぐに教師になるか、企業に就職してから教師になるか迷っています。
いったん会社勤めの経験をすることをおすすめします。会社では上司、先輩、後輩、顧客と日々やり取りをするため、社会の仕組みや人との付き合い方が身をもってわかります。
教師になってから生徒に「この勉強は社会に出てから役に立つの?」と聞かれたとき、実社会での経験をもとに勉強する意味を教えることもできるでしょう。
――私はデータサイエンスの研究をしています。ものづくりの現場で、データはどのように活用されていますか?
特発三協の工場には40台の機械があり、すべてにセンサーをつけて生産数と所要時間、不良品の数を記録しています。
大切なのはデータそのものではなく、データを分析する能力。データは業務改善のためのツールです。生産性が低いのであればデータを見て原因を探る、仮説を立てる、機械を調整してトライするを繰り返して、改善していきます。そうでないと生産効率は上がりません。
ものづくり企業は数あれどデータ分析ができる人は少ないので、データサイエンスを学んだ人は必要とされるでしょうね。
――私は起業を考えています。お客さまや交渉相手の本音を引き出すためになにが必要ですか?
質問力ですね。
特発三協では「お客さまの想いをカタチにする」を心がけています。想いを聞くためには質問をする力が不可欠です。お客さまからあるのは、「ロボットアームの動きをスムーズにしたい」などの要望だけ。どの製品がふさわしいのかは私たちが提案する必要があります。ロボットアームをどう動かしたいのかを聞いたり、自分の理解が合っているのかを確かめたり、あえて離れた質問をして「そうではない」という答えを引き出したりと、さまざまな角度からボールを投げてやり取りをすると、相手が本当にほしいものが明確になります。
――仕事が煮詰まった時はどうしていますか?
自分の行動と思考のパターンを知ると良いでしょう。私はランニングをすると呼吸が整い、自分の考えがまとまるタイプです。パターンを知るには、一度問題から離れて違うことに手をつけてみるのもひとつの方法です。
――教師になってから、生徒の才能を伸ばすには、何を心がけたら良いのでしょうか。
生徒の想いを否定しないこと。その生徒が自分の才能を勘違いしていたとしても、応援してほしい。
教師の仕事は、生徒の顔を未来に向けさせることだと思います。私の息子は高校の先生との折り合いが悪く、学校に通えなくなったことがあります。自分の未来が見えないと落ち込んでいましたが、別の先生が彼自身を認め、根気よく付き合ってくれたおかげで心が軽くなり救われました。
私は社員への評価、機械の動き、自己分析などすべてを加点方式で考えています。人も機械も100点でないのは当たり前。70点が71点になったら努力や工夫を認め、成長を喜ぶ。そんな社会人になり、自分自身や子どもたちを育ててほしいと願います。