インタビュイー
堀口 一也 放電加工のエキスパート
工場長であり放電加工チームのリーダーでもある堀口一也さん。文系出身の42歳。「チーム全員できっちり下準備をし、機械のコンディションを日々整えてこそ、思い通りの製品を仕上げることができるんです」。
※肩書・プロフィールは取材当時のもの
モノづくり業界における「メーカー」は、最終完成品を作る会社だけではない。たとえばパソコン。①部品を組み立てるパソコンメーカーのほか、②パソコンに使われる部品を作るメーカー、③部品を作るための機械を作るメーカー、④その機械の部品を作るメーカーも存在する。
このなかで、大東技研は④にあたる、精密金属部品のメーカーだ。主に半導体を作る機械の心臓部に使用される部品を製作しており、いわばモノづくり業界の根幹を支える存在なのだ。
大東技研には、高精度マシニング、高精度研磨機、高精度検査機器などを有するチームがある。そのなかで、1975年の創業の原点となったのが「放電加工」チームだ。
そもそも大東技研の創業者は放電加工の研究者だった工学博士。当時の精 密部品加工業界に新風を吹き込み、技術の普及に貢献した人物だ。1979年、創業者が設計から製作までを手掛けた「放電加工第一号機」は、現在も工場内に展示されている。
部品に求められる精度は、1ミリの1000分の1(=ミクロン(μ))。ワイヤ放電加工では、細いものでミクロンのワイヤを使い、電流や電圧などの条件を調整して金属を加工していく。
製作する部品は1~2個という小ロット生産。オーダーメイドでのモノづくりだ。「放電加工は、世界でも歴史の浅い技術です。そのなかで、当社は先駆者であり、今もなお第一線を走っていると自負しています」と、放電加工のチームリーダー・堀口一也さんは胸を張る。
ワールドワイドに展開する企業が「一緒にモノづくりを」と、大東技研を指名する理由は、高い技術力、スピーディな仕事、充実した設備、そして人のチカラだ。堀口さんは「大東技研の強みは、チームの団結力」と断言する。取引先からもらった紙の設計図を元に、CADで作図し、実際の加工に移る。加工の手順や方法に正解はない。だからこそ、チームみんなの知識や経験が活きるというわけだ。
大東技研に向いているのは、手先が器用な人。目に見えない電気を取り扱う上、言葉を発しない機械と向き合う 必要があるからだ。プロフェッショナルとして活躍している社員には文系出身者も多い。あきらめずにコツコツと取り組める人なら、知識はゼロでも構わない。「ほかではなかなかできない、高精度なモノを作ってみたい」という人におすすめの仕事だ。
★ワイヤ放電加工とは 浄化水の中で火花を起こし金属を加工する技術。
形彫り放電加工やワイヤカット放電加工とは、工具を使わずに電気の火花で、高硬度金属を溶かし、非常に複雑な形状の加工ができる技術。材質の硬さや厚みに関わらず微細な加工ができ、特に「ワイヤカット放電加工」は、厚さ0.01mm以下の金属加工も可能。
理論的にも構造的にも、とても複雑で難しい加工法のため、初めは取っ付きにくいところがあるが、習熟していく内に無限の可能性を秘めた、奥深い技術であることがわかる。他の技術ではできないことを可能にしてしまう、極めてユニークな技術。大東技研は、放電加工の工学博士が設立した会社で、約40年の歴史があるのが強み。