サービス・インフラ系 業界でオンリーワンオン/オフがくっきり 株式会社アドナース
突撃!学生が会社に聞いてみた【株式会社アドナースの場合】
インタビュアー
明石 陸 大阪大学大学院 文学研究科 日本学史専攻 修士2回生
愛知県出身。口述重視の研究手法を学ぶ過程で、利用者からライフヒストリーも聞けると、デイサービス施設でアルバイトをした。メディア業界志望で就活中の修士2回生。
インタビュイー
鎌田 智広 株式会社アドナース 代表取締役
訪問看護認定看護師。大病院の看護師時代、患者さんともっと触れ合い楽しいことを提供したいと思い辞職。専業主夫を経て2010年、福祉介護ステーション「アドナース」を立ち上げる。
※肩書・プロフィールは取材当時のもの
「最期は住みなれた家で」に応える
明石 介護施設でなく、なぜ訪問看護・訪問介護を始めたのですか?
鎌田 僕が専業主夫時代、ママ友に「訪問看護を手伝ってよ」と頼まれて、やってみました。すると「病院に行くくらいなら死んだ方がマシだ」と話す人がいて、病院は感謝される存在だと思っていたので驚きでした。高齢者へのアンケートでは、住みなれた家で死にたい人が7割。しかし実態は「家族に迷惑はかけられない」と施設や病院へ行く。人生の終盤の時間を思い通りにかなえ、支えるのが訪問看護・訪問介護。僕の役割はこれだ、と思いました。
明石 僕は1年間デイサービスでバイトをしたのですが、お茶を汲むだけでも感謝されたのにびっくりしました。訪問介護では感謝されますか?
鎌田 もちろんです。訪問介護というのはデイサービスと違い、利用者さんはそれぞれ自宅にいて、みな自分で解決できないことをかかえて、僕らの助けを必要としています。だからみんな、僕らの到着を心待ちにしてるんですよ。
明石 正直、介護業界って、人気がないイメージがあります。なぜでしょう。
鎌田 仕事が過酷で給料は安いというイメージが依然あるんですね。あと、自分の作品が残る仕事ではないのも、影響しているかもしれません。
明石 鎌田さんが、介護業界をメディアで発信されているのは興味深いです。
鎌田 はい、障がいがある20〜30代女性のためのファッションフリーペーペーを発行しています。また、訪問看護・訪問介護とは何かを知らない人も多いので、FM局「京都三条ラジオカフェ」で、日本初の訪問看護専門番組のDJとして、介護職らの生の声を伝えて情報発信しています。
明石 福祉介護業界の人が自らメディアを発信しておられるのが、またとない特徴ですね。メディアに人をつなぐ役割があることは、僕も実感しています。フリーペーパーをつくると、学内で新しいメンバーがつながれたんです。
鎌田 つながるのは大事ですね。介護業界は大変そうなイメージが先行しています。実際は、みんな元気で明るく仕事しているし、待遇もいいし、華やかなイメージも作っていきたい。
明石 なるほど。勤務が過酷で給料が安いイメージをデータで否定しても、理屈だけでは通じないのですね。
鎌田 日本のサラリーマンの平均年収は408万円(※)。管理職じゃなくても、夜勤や早朝勤務手当込みでこの額を越えてるヘルパーさんもいますよ。データは示せます。
明石 イメージは感覚的なものなので、ファッション雑誌で華やかさをアピールするのは重要だと思います。
鎌田 僕はもともと患者さんや障がいのある人たちと一緒に楽しいことをしたいと思っていたので、今、京都のローカルメディアで発信できて、よい方向に動けているなと思っています。
明石 確かにそうですね。マスメディアと違って、ローカルメディアは人と人をつなぐ力が強いですよね。
鎌田 認知症カフェの運営のお手伝いもしています。カフェの店主と僕たちと、家族、地域の医師をつなげたい。
新型コロナの影響は「意外と少ない」
明石 新型コロナウィルス流行で、訪問介護に影響は出ていますか?
鎌田 今のところ利用者数も変わらないし、影響は意外に少ないです。
明石 そうなんですね、意外です。感染防止対策はどうしていますか。
鎌田 まず僕らが感染源にならないように、職員の健康管理です。毎朝の体温や症状チェック、手洗い、うがい、マスク着用。朝のミーティングもZOOMを利用してのオンライン。職員は個別に利用者さんのところへ出勤しています。また利用者さんは、サービス前に熱を測ってもらいます。熱がある場合は、マスク、ガウン、手袋、ゴーグルをつけて対応します。
明石 この事態でも利用者数が変わらないなど、想像とは違いました。
鎌田 こんなご時勢でも、利用者さんが日々、僕らの助けを必要としていることに変わりはありません。業界的には国からの補助もある安定した仕事です。今回、手づくりマスクを持ってきてくれた利用者さんもいて、胸が熱くなりました。訪問介護は何をしても感謝してもらえるやりがいのある仕事です。今、組織として成長期にあります。介護職以外にも、今後は事務、人事、広報などいろいろな人材を必要としていくので、アドナースに興味をもってもらえるとうれしいです。